無題: 愚痴を小説風に書いてみる

曇り空の朝10時.
そこに, 小さな怒りがあった.
その怒りの持ち主の男は, カフェに入り, 朝食を頼んでいた.
やがて朝食を食べ終えると, 彼はペンとノートを取り出し, 無軌道に, ただ言葉を書き始めた.

「一つ言えるのは, 今私が怒っている相手は, 間違いなく怒る価値のない相手だ...
敵とする相手は, それに相応しい人間であるべきである.
格下のつまらない人間を敵にしても, 自分のサイズがただ相手と同じところまで下がっていくだけだ.

だが, 私は怒っている. それも, つまらない人間に.
やはり, 私も既につまらない人間になってしまったのだろうか?
最もなりたくないと嫌悪していた, 干からびて退屈な人間に?」

そう思って彼は一度ペンを置いた.
今聞いているピアノの音楽に耳を傾ける.
昔から何度も聞いている音楽. そして何度も新しい良さを見つけてきた.
この中には, 偉大な何かが秘められている...ずっとそう感じ, そう信じてきた.

「耳を流れるピアノの音. 水面に水がまた落ちるような甘美さ.
感傷的すぎるだろうか?
だが, 私はこの甘美さを, 音と共に目を閉じたときに見えるこの世界をどうしても否定できない.
普段目で見ているものの本質が存在している, そんな精神の世界を...」

音楽が止まった.
彼はもとの世界に戻っていた.
周囲では, 人々が楽しそうに喋っている.
彼の怒りは,今はどこかに引っ込んだらしい.
またいつか, 彼の中に現れることを示しながら.

彼は立ち上がった. 時はすでに正午になっていた.